スピーカー再生での良質な低音
「良い低音」とはなにか?
目次
はじめに
私は音響工学を学んでないド素人なので、これから書くことは「素人の考えた謎理論」の域を出ないのでそのつもりで読んでください。
「良い低音」とはなにか?
「そんなの、聴きゃ判る」 いや、ごもっとも。私も「いやー良い低音だね〜」とか「うーん量が足りないんじゃない」とか「切れが悪くてドロドロしている」とか適当な感想を言ったりします。
でも一聴して判ることでも、ネット上ではうまく伝えることが出来ません。 空気録音すると著作権の問題もあります。 なんとか測定して判りやすく示すことが出来ないでしょうか? この場合の測定は当然リスニングポイントでの測定になります。 軸上1mで結果が良かったとしても実際に聴く場所で悪かったら意味がありません。
測定結果から周波数特性を見ると何が判るのか?
- 低域が伸びているか、そうでないか?
- 特定の周波数にピークやディップがないか?
- 低域のレベルが中高域に比べ適正か?
この辺はマイク特性がフラットに補正されてないと不正確になるので自宅内での比較ならともかく他所様との比較は難しい。 また特性にどのくらいスムージングをかけるか、残響をどれくらい残すか(どのくらいの時間でカットするか)で表示がだいぶ変わってしまう。 特に低域レベルは部屋の残響特性や視聴距離・聴く音楽の種類によっても違うので極端な結果でない限り、低域が足りないのか適正なのか過剰なのか聴いてみないとはっきりとしたことは言えない。人の好みもありますし。 更に言うなら私のところはマルチアンプなのでバランスは簡単に変えることが出来ます。 そんなわけでレベルが適正化は無視して「低域だけ」で見ていきます。
実際のデータ
Fig.01
20Hz-200Hzのグラフです。イコライザをかける前の「素」のデータです。 青が2秒、マゼンタが0.085秒でカットしたもの、赤が青のデータをスムージングしたもの。 これから「良い低音」かどうか判りますか? 測定が正しいとするならば「わりと低域が伸びている」くらいしか判りません。 凸凹は部屋の定在波ですが良いのやら悪いのやら。 さて、どうしたものでしょう。
「低域は時間軸で見よう!」
そこで時間軸ですよ! イマドキ、測定はインパルス応答(以下IR)ですよね。 周波数特性も「IRを測定して、その結果をFFTして」表示しているだけです。 IRは位相特性も周波数特性も含んでいます。
IRの波形です。
Fig.02
拡大すると
Fig.03
IRは横軸が時間で縦軸が値なので普通の音声データと一緒です。 実際IRをwavファイルとして入出力するソフトもあります。 これをFFTして表示すると最初のFig.1になります。
このIRのグラフから低域が良いか悪いか判るかというと、「私には判りません」。 じゃあ、どうするか?
インパルス応答を帯域制限する
「必要な周波数成分に帯域制限して、時間軸のまま」見るのです。
70Hzのバンドパスフィルタの波形
Fig.04
周波数特性
Fig.05
この波形をIRに畳み込む
IRに波形を畳み込んだ結果というのは、「その波形を実際にスピーカーから再生してリスニングポイントで録音した結果」とほぼ等しくなります。
Fig.06
当然、入力波形であるFig.4と相似の波形になるのが一番良いことになりますが、現実には不可能です。 Fig.4に比べて収束が遅くなってます。
こんな感じで「低域のキレ」(今回は70Hz付近)を目で見て判るようになります
このグラフなのですが、実のところwaveletのグラフの情報量を減らして特定周波数だけにしたものと同じです。
Fig.07
waveletのグラフ(ソフトによって縦軸・横軸・原点が異なったりしますが)今回は横軸時間、縦軸周波数、色が信号強度です。 Fig.6のグラフの包絡線を計算して信号強度を色に置き換えればFig.7の70Hzの部分と同じになります。
またバンドパスの選択度を変えることによって時間分解能と周波数分解能のどちらを優先するかを変化させることができます。 周波数分解能を上げれば時間分解能が落ち、時間分解能を上げると周波数分解能は落ちます。
バンドパスフィルタを100Hzにしたときのグラフ
Fig.08
部屋の反射によって信号が2つに別れているのがわかります。 Fig.7の100Hzのラインと比べると同じことがわかります。
さて、この波形の変化の原因ですが 「部屋の反射」の影響が一番大きいです。 :もちろんウーファーボックスの強度、パワフルなアンプ、良質なウーファーユニットが低音の再生に有効なことは皆さんご存知だと思いますが、部屋の影響を無視して「良質な低音」は得られません。